【ストーリー】柳沼明日香さん 卵管癌 ステージ3 サバイバー

このストーリーの目次

1. 【ストーリー】柳沼明日香さん 卵管癌 ステージ3 サバイバー
2. 第1話「２人目の赤ちゃん」
3. 第2話「腹部の腫れと違和感」
4. 第3話「卵巣の腫れ」
5. 第4話「東京慈恵会医科大学附属病院へ」
6. 第5話「超音波検査を受けて」
7. 第6話「高い腫瘍マーカーの値」
8. 第7話「がん治療のために勧められた中絶」
9. 第8話「今まで経験したことがないつらいこと」
10. 第9話「中絶手術」
11. 第10話「卵巣の腫瘍摘出手術」
12. 第11話「自宅での外泊」
13. 第12話「抗がん剤治療」
14. 第13話「通院治療と復職へ」
15. 第14話「シンプルに、そして１日１日を丁寧に」

第3話「卵巣の腫れ」

2015年1月、二人目の子供を授かったと確信した東京都大田区在住の柳沼明日香さん（37歳、2015年当時35歳）は、便秘と頻尿に加えて、下腹部が腫れだす。そのことはあまり気にせず産婦人科医院に行ったが、出産予定月まで既に分娩の予約がいっぱいと解る。

診察まで３時間待ちにもかかわらず、この病院は出産予定月まで分娩の予約が埋まっている。
「こんな状況で、今日、先生に診てもらう必要があるのか…。娘も家で待っているし…」
悩んだ挙句、母親に電話した。

「せめて、下腹部の腫れ物のことだけでも今日診てもらいなさい。出産施設のことは次に考えよう。
これもご縁だからね」

下腹部の腫れのことを気にかけていた母親は、とにかく早く診てもらうよう促した。
それもそうだよな…と思った柳沼さんは病院の待合室に留まる。
この日、母親のこの言葉が無かったら、間違いなくそのまま帰宅していた。

待ち時間はそれほど苦ではなかった。
マタニティの雑誌を読んでいると晴れやかな気分でいられた。
待つこと数時間、ようやく名前が呼ばれる。
院長先生による診察だった。
マスク越しに優しそうな雰囲気が読み取れた。

柳沼さんは医師にここまでの妊娠についての経緯を説明したあと、こう打ち明けた。
「先生、実はちょっとここが腫れているみたいなんです」

医師は、一瞬、怪訝な顔をして「えっ…、腫れてる？」そう言った。
自分の状況を深刻には捉えていない柳沼さんにとって意外な反応だった。

それから腹部超音波検査（腹部エコー検査）が始まった。
「先生、私、便秘がひどいんですけど。その腫れ物は便の塊ですか？」そう聞いてみると、

「これは便ではありません。卵巣が大きく腫れています。水のようなサラサラしたものが溜まっているようです。恐らく…手術することになると思います。」

そう返された。

この記事の著者

大久保 淳一(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト（ミリオンズライフ）の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20％といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
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