【ストーリー】藤田誠二さん 慢性骨髄性白血病(CML)

慢性骨髄性白血病(CML) サバイバー藤田さんのストーリーです。

このストーリーの目次

  1. 【ストーリー】藤田誠二さん 慢性骨髄性白血病(CML)
  2. 第1話「献血ルームでの予備問診」
  3. 第2話「白血球の数と腰の痛み」
  4. 第3話「血液の数値異常。大きくなる不安」
  5. 第4話「血液検査結果報告書」
  6. 第5話「慢性骨髄性白血病の疑い」
  7. 第6話「骨髄穿刺」
  8. 第7話「仕事への復帰と治療の継続」
  9. 第8話「隠し続けてきた“がん”を明かしたこと」
  10. 第9話「誰かのヒーローに」

第9話「誰かのヒーローに」

慢性骨髄性白血病の治療を2015年3月から受けている福岡県直方市在住の藤田誠二さん(41歳、2015年当時39歳)は、15年ぶりに偶然再会した河口純一君に自らのがんを打ち明けた。そしてこのことが藤田さんの心を開放していった。

2016年4月。
「藤田君、ちょっといいか…」
職場の上司に呼ばれた。
なんだろう?と思い席につくと、プラントを新規建設する部門の仕事を任せたいという。
これまでの藤田さんの担当は出来上がったプラントを修理する部門の仕事で、それを長く続けてきた。

「いつか新規建設の部門に異動したい」と時々、上司には伝えていたが、藤田さんと似たキャリアの人がそこに異動になった例は今までなかった。

「抜擢(ばってき)された!」

がん患者であるにもかかわらず「病人」とか「制約のある人」といった見方ではなく、自分の仕事ぶりと仕事に対する姿勢を評価してくれた。
それが嬉しくてたまらなかった。

また9月にはそれまで自分が温めていたやりたいことを始めてみた。
自らが着てみたいと思うワイシャツをデザインし、材料も調達し奥さんが縫製して仕立てる。

出来上がったワイシャツを着て街を歩いていると何とも気分がいいのだ。
飲食店に入ったとき、友人でもある店のオーナーから「かっこいいワイシャツだね。俺にも作ってよ」
そう言われさらにうれしくなった。

「がん」を言い訳にしてやらないではなく、後悔したくないからやる人になっている。
なにごとにも積極的なのだ。

病気のことは不安だし3ヵ月ごとの経過観察の検査結果を聞く前日はいまだに眠れないくらい不安になる。
でも元気に活躍し、生き続けることで人生を前に進め、結果的に同じ病の人たちの勇気づけになるのなら、こんな嬉しいことはない。
だからこの「ミリオンズ・ライフ」の取材も実名顔写真入りで承諾した。

がんは自分に自分の人生を全力で生きるモチベーションと、「人に感謝する気持ち」を改めて教えてくれた。
病気も服薬後一年を経過した頃から出てきた薬の副作用もつらいけど、こんな病気、自分の大切な人ではなく僕でよかったと思っている。

You are my hero (あなたは私のヒーローだ).

なんて素敵な言葉なんだと思う。
藤田さんは自分が精いっぱい生きることで結果的に誰かのヒーローになれたことを嬉しく感じている。

自分が生き生きと大切な日々を送ることで、がんに罹患していても自身がやりたいことをあきらめることなく、決して人生を悲観することなく過ごしていけることを伝え続けたいと思っている。

>>藤田誠二さんのインタビューを読む

>>藤田誠二さんのがん経済を読む

取材:大久保淳一

この記事の著者

(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
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