【ストーリー】三枝幹弥さん 中咽頭癌（扁平上皮癌） ステージ4 サバイバー

このストーリーの目次

1. 【ストーリー】三枝幹弥さん 中咽頭癌（扁平上皮癌） ステージ4 サバイバー
2. 第1話「微熱とリンパ腺の腫れ」
3. 第2話「何かが違う、おかしい」
4. 第3話「悪性腫瘍の細胞が検出」
5. 第4話「告知に次々と埋まる予定」
6. 第5話「経営者のがん」
7. 第6話「がん研有明病院へ」
8. 第7話「ステージ４」
9. 第8話「声か、命か」
10. 第9話「取引先、金融機関、社員への説明」
11. 第10話「CCRT化学療法併用放射線治療」
12. 第11話「５分５分でわかりません」
13. 第12話「顔面神経、舌下神経、副神経のリスク」
14. 第13話「手術と病理検査」
15. 第14話「戻らない体力と筋力」
16. 第15話「中身の濃い５年間」

第6話「がん研有明病院へ」

山梨大学医学部附属病院で生検を受け、がんを知らされた山梨県中巨摩郡昭和町在住の三枝幹弥さん（48歳、2010年当時41歳）は、その足で東京に向かった。弟と叔父と会い今後の会社の体制について相談する為だった。

思い返せば父親は昔から「（幹弥と琢弥の）兄弟で会社をするのは大変だ。会社と一緒に家族全員が運命を共にしてしまうから」そう言っていた。
だから最初のころ、会社経営は三枝さんだけが引き継いだ。
しかし業績が拡大しとても一人では回せなくなり、２００５年に弟の琢弥さんにも会社に入ってもらった。
山梨の会社は三枝さん、東京の会社は琢弥さんという役割分担。これでうまく回っていた。

東京には昼過ぎに着いた。
取締役の弟と相談役に退いていた叔父と今後の仕事の引継ぎと会社運営について話し合った。
二人とも「がん」のことを気にしていた。
たまたま叔父の娘が東京で耳鼻科の医師だった。
三枝さんの８歳年下の従妹だ。
悪い所は切って取ってしまい終わり、あとは治ると安直に考えている三枝さんのサポートをするため従妹は助言した。
中咽頭のがんは一般的に症例が少ない。だから治療した症例数の多いがん専門の病院で治療を受けるのが望ましいということだった。
そして具体的に名前が挙がったのが「がん研有明病院」。
山梨からだと、なんとも遠い所にある病院だった。

東京で３人の打ち合わせを終えるとその足で新宿駅に向かい特急あずさ号で甲府にとんぼ返りした。
実家に着いたのは夜の１０時過ぎ。
疲れているはずだが本能は命の危険を察知しているのか興奮が収まらなかった。
そして両親にがんと会社のことを話した。
「大丈夫だと思うよ」と安心させるためにいう三枝さん。
母親は涙を浮かべて泣くだけだった。「心配だ、心配だ」と言われ申し訳ない気持ちになる。
父親は「こればっかしはしょうがない…。がんばって治すしかないな」と気丈にふるまう。

２０１０年１０月１５日金曜日、がん研有明病院に電話した。
通常、数週間待ちとも言われるあの病院が、週明けの月曜日の予約が先ほどキャンセルになったので１８日に来れますか？と聞かれる。
大急ぎで山梨大学医学部附属病院から紹介状と資料を取り寄せ早速月曜日に行った。
がんだから、時間が経つと状況は悪くなる。
１日でも早く、１日でも早くと飛び回っていた。

この記事の著者

大久保 淳一(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト（ミリオンズライフ）の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20％といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
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