【ストーリー】三枝幹弥さん 中咽頭癌（扁平上皮癌） ステージ4 サバイバー

このストーリーの目次

1. 【ストーリー】三枝幹弥さん 中咽頭癌（扁平上皮癌） ステージ4 サバイバー
2. 第1話「微熱とリンパ腺の腫れ」
3. 第2話「何かが違う、おかしい」
4. 第3話「悪性腫瘍の細胞が検出」
5. 第4話「告知に次々と埋まる予定」
6. 第5話「経営者のがん」
7. 第6話「がん研有明病院へ」
8. 第7話「ステージ４」
9. 第8話「声か、命か」
10. 第9話「取引先、金融機関、社員への説明」
11. 第10話「CCRT化学療法併用放射線治療」
12. 第11話「５分５分でわかりません」
13. 第12話「顔面神経、舌下神経、副神経のリスク」
14. 第13話「手術と病理検査」
15. 第14話「戻らない体力と筋力」
16. 第15話「中身の濃い５年間」

第1話「微熱とリンパ腺の腫れ」

「実は、昨日、東京マラソンを走ったんだよ。２５ｋｍの制限時間関門は無理だったけど…」
それを聞いた皆が驚いた。
がん治療を終え１年１０ヶ月、自分の体調をずっと心配してきた皆に良い報告ができた。

２０１０年９月のことだった。
山梨県中巨摩郡昭和町在住の三枝幹弥さん（48歳、2010年当時41歳）は、微熱に悩んでいた。
左首のリンパ腺も腫れている。
小指の先くらいの大きさのふくらみが左首にポツンとある。

幼少のころから年に４～５回風邪をひき首のリンパ腺が腫れた三枝さんは「またやっちゃった」と思い、自宅近くの耳鼻科クリニックに行った。
家の近所のクリニックではあったが初めて行く病院で、ゴマ塩頭の初老の男性医師が診てくれた。
口を開けて「あー」とベロを下げてみせる。

「扁桃腺が腫れていますね。首のリンパ腺も腫れていますから、きっとばい菌でも入ったんでしょう」

そう診断され抗生物質を処方された。
やっぱり、また風邪か…という感じだった。

病院をでてその足で会社に向かった。
三枝さんは山梨県で宝飾品の加工メーカーの副社長（当時）を務めていた。
父親が興した会社で、その後継者だった。
東京には宝飾品を卸し・販売するもうひとつの会社もある。
山梨の会社は三枝さん、東京は弟の琢弥さんと分担して兄弟で経営していた。

処方された薬を飲み続けて１週間様子を見ると、熱は下がった。
しかし左首にあるパチンコ玉半分くらいの腫れがひかない。
以前に比べ少し大きくなってきた感じすらするのだが、それより何より全然小さくならないことが気になった。

いつもと違う…、そう感じている。

しかし９月は貴金属メーカーにとって忙しい時期だ。
年末商戦に向け新しい企画がどんどん立ち上がる。

首の腫れはちょっと気になったが、仕事が忙しいので「まあいいか」とやり過ごした。

この記事の著者

大久保 淳一(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト（ミリオンズライフ）の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20％といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
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