【ストーリー】三枝幹弥さん 中咽頭癌（扁平上皮癌） ステージ4 サバイバー

このストーリーの目次

1. 【ストーリー】三枝幹弥さん 中咽頭癌（扁平上皮癌） ステージ4 サバイバー
2. 第1話「微熱とリンパ腺の腫れ」
3. 第2話「何かが違う、おかしい」
4. 第3話「悪性腫瘍の細胞が検出」
5. 第4話「告知に次々と埋まる予定」
6. 第5話「経営者のがん」
7. 第6話「がん研有明病院へ」
8. 第7話「ステージ４」
9. 第8話「声か、命か」
10. 第9話「取引先、金融機関、社員への説明」
11. 第10話「CCRT化学療法併用放射線治療」
12. 第11話「５分５分でわかりません」
13. 第12話「顔面神経、舌下神経、副神経のリスク」
14. 第13話「手術と病理検査」
15. 第14話「戻らない体力と筋力」
16. 第15話「中身の濃い５年間」

第13話「手術と病理検査」

2010年に中咽頭がん（ステージ４、扁平上皮癌）と診断され、化学療法併用放射線治療CCRTを受け、左首の手術を2011年3月17日に予定していた山梨県中巨摩郡昭和町在住の三枝幹弥さん（48歳、2011年当時42歳）だったが、東日本大震災が起こり手術はキャンセルになった。

まるで深い谷底にポツンと一人いるような感じだった。
身体も心も弱っている中、一時は受けたくないと思った左首の手術を受ける覚悟をし前向きになったところに震災が起こった。
世の中は混とんとしていて、ついこの前までは想像もしなかった生活になっていた。

一方、がん研有明病院は早期の再開を目指していた。
翌週に連絡が来て３月２３日入院、翌日に手術を行うことになる。

２４日、家族が見守るなか手術は５時間に及んだ。
手術後、自分の病室に戻り看護師の声掛けで目が覚めた。
首にはドレーンがついていて首を曲げられない。
看護師に優しく言われた「手術ちゃんと上手くいきましたよ」
妻から「よかったね。うまくいったって」
事前にリスクとして説明されていた合併症は一つも起こらなかった。
「ああ、無事に終わって、本当に良かった」心の底からホッとした。

切除した首の組織は、病理検査にまわされ６月の外来で担当医から検査結果を知らされることになった。

山梨の実家に戻った三枝さんは少しずつリハビリに励んだ。
７４ｋｇあった体重は５９ｋｇにまで落ちている。
でもゆっくりゆっくり少しずつ、できる事が増えていく。
昨日はヨーグルトを食べられるようになった。
今日は、そうめんを食べられた。
放射線治療の副作用でしばらくは何も食べられなかったが徐々に食べられるように戻っていく。
体力と筋力も落ちたので、毎日、散歩した。地元を流れる荒川の土手をゆっくりと歩いた。

そして迎えた６月、がん研有明病院・耳鼻科（東京都台東区）
担当医と話すがなかなか検査結果の話が出てこない。だから催促した。
「先生、手術で取った組織の病理検査の結果はどうだったんですか？」
忘れていたのか、ハッとして医師はデータを出して確認し、こういった。
「あっ…。（活動性のがん細胞は）何もなかったんだな…。これは良かったですね！」
担当医が初めてニコリとした。本当に嬉しそうだった。
それを見て自分も嬉しくなった。

この記事の著者

大久保 淳一(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト（ミリオンズライフ）の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20％といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
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