中咽頭癌(扁平上皮癌) ステージ4a サバイバー 三枝幹弥さんのストーリーです。
このストーリーの目次
- 【ストーリー】三枝幹弥さん 中咽頭癌(扁平上皮癌) ステージ4 サバイバー
- 第1話「微熱とリンパ腺の腫れ」
- 第2話「何かが違う、おかしい」
- 第3話「悪性腫瘍の細胞が検出」
- 第4話「告知に次々と埋まる予定」
- 第5話「経営者のがん」
- 第6話「がん研有明病院へ」
- 第7話「ステージ4」
- 第8話「声か、命か」
- 第9話「取引先、金融機関、社員への説明」
- 第10話「CCRT化学療法併用放射線治療」
- 第11話「5分5分でわかりません」
- 第12話「顔面神経、舌下神経、副神経のリスク」
- 第13話「手術と病理検査」
- 第14話「戻らない体力と筋力」
- 第15話「中身の濃い5年間」
第9話「取引先、金融機関、社員への説明」
2010年に中咽頭がん(ステージ4、扁平上皮癌)と診断された山梨県中巨摩郡昭和町在住の三枝幹弥さん(48歳、2010年当時41歳)は、3つの治療方法の中から声を残せる放射線治療と抗がん剤治療の組み合わせである「化学療法併用放射線治療CCRT」を選んだ。
入院は11月22日、CCRTの治療開始は11月24日と決まった。
それまでの2週間は、目が回るほど忙しかった。
まず放射線治療の準備として顔と頭を固定する樹脂でつくられた網状のヘルメットを作った。
マスクという。
まるで金属工場でつくる鋳物の鋳型のようなもので三枝さんの顔と頭の形に合わせ固定し動かないようにする「型」なのだ。
放射線治療中の20分間は確実に患部に放射線を当てるため顔と頭は動かせない。
それを実現するためにつくられた「マスク」を治療中は頭に被せビスで治療台に固定する。
一方で会社の仕事も精力的にこなしていた。
2週間で10社以上を訪問し、各社に状況を説明した。
数週間前、ありとあらゆるアポイントメントをドタキャンした。
だから取引先と金融機関は何があったんだろうと思っているはずだ。
今後は治療により体重が落ちていく。
がんの事実を明かし、痩せることはがんが進行しているのではなく、治療が順調に進んでいる証拠なのだと事前に伝えなくては、疑心暗鬼になられて事実でないことをうわさされる可能性もある。
そんな思いから取締役の琢弥さんを始め役員たち5人で各社に説明に回った。
どの会社も「がんばって治療してください」と応援してくれる。
自分の病気のことで色んな人に迷惑をかけるのがとても申し訳なく感じた。
そしてもう一つの大事なこと。
社員たちへの説明。
上層部が勢ぞろいで毎日のように取引先と金融機関を回っているのを知れば不安になる。
だから皆がいる全体朝礼の時に発表した。
がんだと伝えると、しーんとした。
自分がしっかりすることが何よりも大事と感じ、力強く元気になって戻ってくると伝えた。
そして上京し病院に入院する前日。
荷造りをしていたら夜遅くなり24時を過ぎたころ、寝ていたはずの長男が泣きながら起きてきた。
やがて2番目の長女、3番目の次女と子供たちが泣きながら起き出してくる。
抱きかかえて、みんなに大丈夫だよ、大丈夫だよと繰り返した。
この記事の著者
大久保 淳一(5yearsプロフィール)
日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
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