悪性縦隔腫瘍(胚細胞腫)、転移性脳腫瘍、放射線治療後の脳浮腫 ステージ4 サバイバー 金内大輔さんのストーリーです。
このストーリーの目次
- 【ストーリー】金内大輔さん 悪性縦隔腫瘍、転移性脳腫瘍、他 ステージ4 サバイバー
- 第1話「止まらない咳」
- 第2話「命にかかわる病気」
- 第3話「悪性縦隔腫瘍(胚細胞腫)」
- 第4話「5クールのBEP療法」
- 第5話「外科手術と肺転移」
- 第6話「がん病棟で迎えた二十歳の誕生日」
- 第7話「脳転移」
- 第8話「ガンマナイフによる放射線治療」
- 第9話「再びの大学生活」
- 第10話「放射線治療の後遺症と病気差別」
- 第11話「思うようにいかない毎日」
- 第12話「繰り返して再挑戦」
- 第13話「1通の通知」
- 第14話「報われない努力はない」
第14話「報われない努力はない」
19歳のとき発症した悪性縦隔腫瘍(胚細胞腫)、その後、脳に転移・再発した腫瘍のガンマナイフ放射線治療から結果的に放射線障害を発症した北海道余市郡在住の金内大輔さん(44歳、2004年当時31歳)は、大学卒業後に不運が続きなかなか活路を見いだせないでいた。しかし言語聴覚士になるための挑戦を3年続けているうちに北海道職員としての採用が決まる。
“2004年北海道職員障害者採用試験最終結果・合格”
後に漏れ聞いた話では、この年160名以上が受験し僅か10名が合格したという。
その10人の中に金内さんは入っていた。
うれしかった。
この合格のために今までの受験勉強と不合格があったのだと思える。
ようやく自分という人間が認められ心から喜んだ。
まさに導かれた感じがした。
2005年4月に北海道松前郡福島町の福島小学校の事務職員として着任した。
ただ体調は不安定で翌年脳の手術を受け、頭の中の水分を抜き貯めるリザーバーの設置手術も受けた。
その後、再び福島小学校に復帰する。
2010年37歳のとき、辞令により北海道寿都(すっつ)郡寿都町の小学校に転勤になった。
定期異動だった。
その小学校での勤務が大きな転機となる。
この小学校では1年生から6年生まで毎朝グラウンドを10分間みんなでぐるぐると走っていた。
各人が10分間で走れるだけ走る学校を上げての体力づくりプログラム。
身体的なハンディキャップを負っているが、自分も児童たちと一緒に走ろうと思った。
手足の機能障害から走り方がぎこちなく、それまでは走る姿をみせたくなかったが走ることにした。
自分が走ることで子供たちに何か想いが伝わるかもしれないし、自分も変わるかもしれないと好奇心から始めた。
毎日朝のマラソンは憂鬱だったが、自分で決めたからと思い毎朝わずか1周だけだが欠かさず走った。
しかし頭の中に徐々に水が溜まりだし体の動きが悪くなり、時々はつまずいて転ぶこともあった。
そして2014年に2度目の開頭手術を受け放射線により死んだがん組織を摘出するオペを受けた。
その際に頭に付けられていたリザーバーも取り外された。
するとそれまであった麻痺がかなり改善する。
右手・右腕の機能が徐々に改善し、持てなかったペンが持て、わずかながら字も書けるようになったのだ。
こんなこともあるのか…、少しずつ良くなっているのがわかる。
昨年、2度目の転勤で北海道余市郡の小学校に赴任。
今の生活は見ちがえる。
毎週最低2日、多いときは4日、スポーツクラブに行ってエアロバイクをこいでいる。
もっと身体を動かせるようになりたいのだ。
体調は悪くない。
この25年間いろんな苦労を経験してきたが、報われない努力はないと感じている。
必ず何らかの結果につながるからだ。
金内さんは小学6年生のとき幅跳びが得意で「4m86cm」という記録がある。
いまも身体的なハンディキャップはあるが走り幅跳びなら出来るような気がしている。
トレーニングを積めば4m86cmだって越せるんじゃないかと思っている。
だからいつかマスターズ陸上で挑戦してみようと思っている。
著作家ナポレオン・ヒルの有名な言葉、「思考は現実化する」
その言葉を信じて、充実した毎日を過ごしている。
この記事の著者
大久保 淳一(5yearsプロフィール)
日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
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