浸潤性乳管がん トリプルネガティブ 遺伝性乳がん(BRCA2異変)サバイバー 依田福恵さんのストーリーです。
このストーリーの目次
- 【ストーリー】依田福恵さん 乳がん ステージ1 サバイバー(トリプルネガティブ)
- 第1話「乳がんの確定診断」
- 第2話「幼少から社会人になるまで」
- 第3話「母のがん」
- 第4話「交際相手のレントゲンに写る影」
- 第5話「交際相手のがん」
- 第6話「がんの転移」
- 第7話「唐突な知らせ」
- 第8話「全摘か部分摘出か」
- 第9話「始まったがん治療」
- 第10話「左胸の全摘と乳房の同時再建」
- 第11話「抗がん剤治療と復職」
- 第12話「色々なことが起こった2年を越えて」
第6話「がんの転移」
孝之さん(仮名)と27歳の時につきあい始め、それから20年余り週末を夫婦のように暮らしていた東京都東村山市在住の依田福恵さん(54歳、2014年当時49歳)は、肺がんを患っている孝之さんが杖を使い始めたことに驚いた。
依田さんは心配していた。
いくら抗がん剤治療が効いてきたとはいえ肺がんの患者には違いない。
しかも先週会った時の孝之さんは杖をついてふらふらしていた。
こんな状態で仕事を続け、仕事場まで車で通っているなんて心配で仕方がなかった。
2014年9月
今週はふらつき方が明らかに悪化していた。
玄関先で靴を履こうとするとよたよたして尻もちをついてしまった。
「抗がん剤の副作用ってこんなに強く出るものなの…?」
副作用だと信じていた。
二人が週末会うときはいつも事前に、マンションへの到着時刻と献立について確認していた。
しかし、翌週は孝之さんからの連絡がなかった。依田さんが電話しても出ない。
それでもと思ってマンションで待っていたがやはり来ない。
何度も電話するが電話に出ることはなかった。
「これは何かあったな」
そう思った依田さんの脳裏に浮かんだのは交通事故。
あんな身体でふらふらして運転するなんて危ないと思っていたからだ。
知人でもあった孝之さんの友人男性に電話すると、数日経ってやっとつながった。
「実はね、脳にがんの転移が見つかっちゃってさ、即入院になっちゃったんだ。9月22日だったよ」
びっくりした。
治療は上手くいっていると聞いていただけに「なんで脳に転移なんてするんだろう…」転移した場所が場所なだけに、さすがの依田さんも不安が募る。
見舞いに行きたいが「来てはいけない」という孝之さんとの約束がある。
こんな状況だと娘さんも病院に来ているだろうから行き難いのも事実だ。
別に不倫とか、世間から後ろ指を刺されるような関係ではなく独身者同士の20年以上の交際なのだが、彼の娘さんには内緒の関係だから会いたくても会うことができない。
つらい日々が過ぎていった。
その翌月、10月。
依田さんがお風呂に入っていたとき「えっ!?」と思うことがあった。
「胸にちょっと動くしこりのような物がある…」
この記事の著者
大久保 淳一(5yearsプロフィール)
日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
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