卵巣がん(漿液性)ステージ3cサバイバー大塚さんのがんに関するストーリーです。
このストーリーの目次
- 【ストーリー】大塚美絵子さん 卵巣がん(漿液性)ステージ3cサバイバー
- 第1話「残念ながら、来年は無いかもしれません」
- 第2話「妊婦のように腫れあがったお腹」
- 第3話「卵巣がんに間違いないと思います」
- 第4話「エンディング・ノートで芽生える力強い気持ち」
- 第5話「順調に進む治療と経済支援制度の穴」
- 第6話「手術と抗がん剤治療」
- 第7話「再発への不安」
- 第8話「社会参加のためのビジネス立ち上げへ」
第5話「順調に進む治療と経済支援制度の穴」
抗がん剤(パクリタキセル+カルボプラチン)の投与が始まった埼玉県さいたま市在住の大塚美絵子さん(55歳、2012年当時51歳)は、おおむね順調に治療が進み入院生活のペースもつかめてきた。
「傷病手当、あなたももらえるはずよ!」
4人部屋の病室で雑談している時、先輩患者の女性にそういわれた。
8月中旬のことで、大塚さんには何とも不思議な感じがした。
なぜなら7月末に元の職場を退職していたからだ。
既に会社を辞めているのだから、病気で仕事を休んでいる人を経済的に支援する制度(傷病手当金)の対象にはならないと思っていた。
一方、失業手当はもらえるものと思っていたので、抗がん剤治療のあいまの一時的な退院をしたときハローワークに行ってみた。
カウンターで事情を説明し失業給付金の受給手続きをしたいと申し出ると、返ってきた説明は意外なものだった。
「失業手当は働ける状態にありながら仕事につけていない人を支援する制度なのです。病気で治療中のあなたは働ける状態の人ではありませんから制度の対象にはなりません」
「えっ…」
あてにしていたお金が入ってこない。
あまりにもの衝撃で愕然(がくぜん)とした。
何とも言えない焦燥感の中、先日、4人部屋の女性が言っていた傷病手当金のことを思い出した。
後日、埼玉県庁保険医療の担当者に問い合わせてみると在職中に発症したのであれば受給資格があるという。
早速、元の会社の人事部に連絡し交渉するが、会社にとっても初めてのケースなので担当者も戸惑う。
失業手当がもらえないとわかったいま、傷病手当金だけが頼みの綱だ。
制度について自分で勉強し以前の会社の人事部と話してみたがなかなか話が進まない。
そこで飯田橋にある東京都産業労働局労働相談情報センターの女性担当者に相談したところ、「退職の場合は規定の解釈が難しいのよ」と言い、大塚さんに代わり以前の会社の担当者に説明してくれた。
そして道が開ける。
健康保険組合から受給認定が下りた時、「これでしばらくはお金の心配をせずに治療に専念できる」と何とも言えない安心を感じた。
この記事の著者
大久保 淳一(5yearsプロフィール)
日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
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