【ストーリー】本園泰さん 中咽頭がん ステージ4 サバイバー

このストーリーの目次

1. 【ストーリー】本園泰さん 中咽頭がん ステージ4 サバイバー
2. 第1話「口の奥に違和感」
3. 第2話「舌根に腫瘍」
4. 第3話「中咽頭がんの疑い」
5. 第4話「ステージ４」
6. 第5話「<a href="https://kyushu-cc.hosp.go.jp/" rel="noopener" target="_blank">九州がんセンター</a>への転院」
7. 第6話「IMRT（放射線化学療法）」
8. 第7話「限定的な治療効果」
9. 第8話「11時間の手術」
10. 第9話「がん治療の終了」
11. 第10話「心から幸せをかみしめて」

第7話「限定的な治療効果」

中咽頭がん（ステージ4、扁平上皮がん、HPV型、）を告げられ、2016年4月よIMRT（放射線化学療法）を受けていた福岡県福岡市在住の本園泰さん（60歳、2016年当時58歳）は、治療効果が限定的であると手術の可能性を示唆された。

治療効果を診るために行われたMRIとCT画像検査、その結果、がんは完全には消えず想像したほどには効いていないと言う説明だった。
今後の治療については、明日のカンファレンスで決めると言う。
その説明を受けた本園さんは、直感的に６割方、手術になるのだろうと思った。

“手術、声を失う…”

押さえきれないつらい想いがこみ上げてきて、夕方、見舞いに来た妻の前で泣いた。
がんを告げられてから初めて泣いた。
まるで「希望の灯」が消えたかのような気持ちになり、人生が終わりに入ったように感じる。
仕事も今から挑戦したいことがあったし、６歳年下の妻と旅行をたくさんしたいと考えていた。

でも、喋れない人になってしまう…。
涙がとめどもなく出てきて止まらなかった。

翌日再び主治医に呼ばれ部屋に行くと、カンファレンスの結果、手術を行うと伝えられた。
ただ、こうも言われた。
食べ物の飲み込みは多少苦労するかもしれないが、口から食事がとれるし、声だって残る。
努めて明るい感じで説明された。

その後、リハビリ科の医師からも説明を受けたが、その際聞いてみた。
もし先生の身内に自分と同じ状況の人がいたら手術を勧めますか、と。
するとリハビリ科の医師から「僕なら家族に手術を勧めます」ハッキリ言われ気持ちが固まる。

オペ後の自分は、滑舌がよくないかもしれない。
飲み込みもイマイチかもしれない。
でも自分はまだ死にたくないし、生まれたばかりの孫の成長も見届けたい。
会社の事業も拡大したいし、趣味の釣りとマラソンも楽しみたい。
マラソンが無理でも、ウォーキングぐらいはしたい。

放射線治療を一生懸命頑張ったのに手術となるのは残念だけど、ここで腹をくくった。
不安はあるし怖さもあるけど、再びがん治療に向き合うと決めた。

この記事の著者

大久保 淳一(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト（ミリオンズライフ）の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20％といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
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