中咽頭がん ステージ4 サバイバー 本園泰さんのストーリーです。
このストーリーの目次
- 【ストーリー】本園泰さん 中咽頭がん ステージ4 サバイバー
- 第1話「口の奥に違和感」
- 第2話「舌根に腫瘍」
- 第3話「中咽頭がんの疑い」
- 第4話「ステージ4」
- 第5話「<a href="https://kyushu-cc.hosp.go.jp/" rel="noopener" target="_blank">九州がんセンター</a>への転院」
- 第6話「IMRT(放射線化学療法)」
- 第7話「限定的な治療効果」
- 第8話「11時間の手術」
- 第9話「がん治療の終了」
- 第10話「心から幸せをかみしめて」
第9話「がん治療の終了」
中咽頭がん(ステージ4、扁平上皮がん、HPV型)を告げられ、2016年4月からIMRT(放射線化学療法)を受けていた福岡県福岡市在住の本園泰さん(60歳、2016年当時58歳)は、治療効果が限定的だったため11時間に及ぶ手術を受けた。
手術から2日目の6月22日、導尿チューブが取れる。
この日、担当医の指示のもと入院病棟のフロアを歩いた。
ヨタヨタだったが、歩けたことが嬉しかった。
そして次の日、気道を確保するために喉に取り付けられていたチューブが取れる。
すると…、なんと、しゃべれるのだ。
心が震えるくらい感動し、すぐに携帯電話で妻に連絡「しゃべれるよ!」その喜びを伝えた。
この時これまで頑張ってきた全てのことが報われた気がした。
ただ一方、食事はというと、飲めない・食べられない日が続く。
点滴で水分と栄養を身体に入れ、なんとか保っている感じだ。
“これではいけない”と思うが、食事に対してはとても自信が持てない。
「くやしい…、これじゃ何のために手術したのか解らないじゃないか…」
多少投げやりな気持ちになった。
しゃべること、口からご飯を食べること、その両方を求めていた本園さんは落胆する。
7月1日、切除した組織の病理検査の結果が届く。
幸い転移は見つからず、大きかったがん病巣すべてを取り切れたという。
これにより、本園さんのがん治療は終了した。
食事のことで焦っていた本園さんだが、主治医は「回復ペースは普通の人より早い方ですよ」と説明し、やがてゼリー食に替わる。
舌を上手く動かすことができないが、がんばって食べた。
7月7日、お粥状のご飯が出される。
このとき解ったが、人は普通、無意識に口の中の食べ物をベロでかき回し、餅つきのように歯でかみ細かくしてから飲み込む。
まだ、ベロを上手く動かすことができない本園さんは、まるで手捏ねしない餅つきのようで、歯の下に食べ物をよせられず、食べ物がないところに歯がカタカタと上下しているようだ。
舌を使って食べることが、こんなにも繊細な作業だったのかと知りがく然とした。
次のページを読む >> 第10話「心から幸せをかみしめて」この記事の著者
大久保 淳一(5yearsプロフィール)
日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
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