がん患者さんから「(医師の)紹介状なしで、他の病院からセカンドオピニオンを受けられますか?」という類の質問を受けることがあります。
私の知る限り、どの医療機関も大抵、紹介状を必要としています。
今回は、紹介状なしでセカンドオピニオンを受けようとする場合のリスクについて纏めます。
関連記事はこちらから
がんのセカンドオピニオンでよくある3つの悩みと解消のヒント
「転院」で失敗しないために、知っておくべきリスク5つと正しい転院のポイント
【紹介状なしを望む患者たちの背景・理由】
❏ 主治医と不仲
理由は人それぞれだと思いますが、主治医と上手くいっていないケースです。だから「紹介状を書いてください」と依頼できず、できるのであれば紹介状なしで他の医療機関でオピニオンを聞きたいと思っている患者さんがいます。
❏ 医師と距離がある
主治医と不仲という訳ではないが、「紹介状」をお願いしにくいという人もいます。
例えば、依頼したら「そんなに私のことを信用できないんですか」とそっぽを向かれないかとか、紹介状の一件から冷めた関係になってしまうかもしれないなど、まず不安が先行する気軽に頼みにくい関係の場合です。
❏ 転院を検討している
不仲を通り越して、患者側が病院を移ることを決めていて、「どうせ出ていくんだから、今さら紹介状を書いてくださいなんてお願いするのはまっぴら御免」というケースです。
いずれの場合も、医師との人間関係に起因して、紹介状を敬遠する人たちです。
【紹介状に書かれている内容】
私が当時、主治医の先生に書いて頂いた紹介状には、以下のことが専門的な医療用語で書かれていました。
❏ 検査結果と治療歴
これまで受けた検査の結果と、受けた治療についての記載
❏ 今後の治療予定
現在、患者(=私)がどのような治療段階にあり、今後選ぶべき第一選択の治療方法についての記載
❏ 依頼文章
患者(=私)が、貴医療機関でのセカンドオピニオンを希望しているのでご対応をお願いしますと言うもの。
【リスク】
紹介状なしでセカンドオピニオン外来を訪れることは、以下のようなリスクをはらんでいます。
❏ 不審
セカンドオピニオン外来の予約を取る時点で、病院側から「紹介状をもらってきてください」と言われているにもかかわらず持参しないことは、患者側の不利益になると思います。
まず、初めて会う医師から不審に思われたら、最初から人間関係がうまくいきません。「(主治医から) 紹介状をもらったけど、今日はうっかり忘れてきちゃいました」などとごまかしたら、本当なのかな?と怪しまれ、信用されない可能性もあります。
❏ きちんとしたオピニオンにならない
紹介状を持参していなかったら、恐らく医師は、(申し訳ありませんが)セカンドオピニオンは言えないと、その場で断る可能性が高いです。こうなると、患者にとって時間とお金の無駄になります。具合が悪い時にそんな冒険を犯す必要があるのでしょうか。
万が一、せっかく来たのだからと、患者が口頭で説明する治療歴と検査結果をもとに何か話す医師がいたとして、「あくまで、もし、そうだとしたら…」という仮定のもとに話すはずです。ですから、オピニオンレターを書く医師はいないと思います。
❏ 漂流患者
最悪のシナリオは、漂流患者になってしまうことです。
今の病院の主治医とは関係がよくないし、これ以上あの先生から治療を受けたくない。セカンドオピニオンを通じて転院しようとして、でも、紹介状なしで他の医療機関を訪れたら、どこの病院も受け入れず、結果的に行き場のない患者になってしまうケースです。
こんな事にならないようにして頂きたいです。
【うら事情】
時々、「医者は医者の言うことを信じる」と言う言葉を聞きます。
極端な言い回しで真意かどうかは定かではありませんが、医療の素人である患者が紹介状なしにいろいろ説明しても、医療のプロが書く主治医の紹介状にはかなわないのだと思います。
❏ 医者どうし繋がっている
同じ診療科であれば、違う病院にいても医師同士知り合いの可能性があります。大学で先輩・後輩の関係だったとか、以前の病院で一緒だったということはよく聞きます。また同じ学会に属している訳ですから、毎年、学会で会っていてお互い知り合いの可能性も高いです。
だから紹介状がない理由を医師側に問題があると主張しても「あの〇〇先生は、そんな人じゃない」などと思えば、セカンドオピニオン外来の医師は患者側に問題があるのだろうと思うかもしれません。
❏ 苦い歴史
お医者さんだって人間ですから、やっかいな患者は敬遠しがちと想像できます。
友人の医師から聞いた話ですが、昔から「あれは医療ミスだ。主治医を訴えたいからオピニオンを書いてほしい!」などとお願いしてくる患者が毎年一人や二人はいて、対応に苦慮すると言っていました。
だから紹介状を持って来ていない時点で、やっかいな患者ではないかと思われる可能性は十分にあり得ます。
【まとめ】
他の病院でセカンドオピニオンを受けようとする場合、紹介状を持っていないと、その患者さんにとって、何も良いことがないと思います。
例え主治医と不仲であったとしても、きちんとお願いして紹介状をもらうことが必要でしょう。
医師と精神的な距離があり、なかなか切り出せない場合はミリオンズライフの『セカンドオピニオンでよくある3つの悩みと解消のヒント』を参考にして主治医の心象を傷つけないような伝え方が良いと思います。
最後に、私が取材したある乳がん患者さんの例ですが、関係が悪化したため、主治医の手術は受けたくないとして紹介状をお願いしたら、「○○さん、手術を受けることは決心してくれたんですね。だったら喜んで紹介状を書きます」と言われたそうです。
セカンドオピニオンを取得する際には、きちんと主治医にお願いして紹介状を持って他の病院を訪れることが、寛解に向けた一歩だと思います。
この記事の著者
大久保 淳一(5yearsプロフィール)
日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
>>NPO法人5yearsの組織概要はこちら
-Sponsored-