便潜血陽性、血便、下痢と便秘の繰り返しには要注意|大腸がん 4人の事例

大腸がん(直腸がん、S状結腸がん等)は、男性・女性ともに罹患者数が2番目に多い病気です。

便潜血陽性、血便、下痢と便秘の繰り返し、そして腹痛を感じたらなるべく早く大腸内視鏡検査を受けてほしい

「ミリオンズライフ」の取材のためにこれまで4名の大腸がん経験者の方からお話を伺いました。皆さんが振り返り悔やまれていることと大腸がんの兆候について共通するものがあると感じています。

大腸がんは、男性・女性ともに罹患者数が2番目に多い病気で(国立がん研究センターがん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/index.html)、
生涯での罹患リスクが男性の場合10%(10人に1人)、女性は8%(13人に1人)と高い値を示しているため、是非知っておいていただきたいと思いまとめました。

似た状況にあるけどまだ病院に行かれていない人や、また、今後似た状況になった方の参考になれば嬉しいです。

中川美和さん(発症時48歳、S状結腸がん)
吉田博行さん(発症時63歳、直腸がん)
安谷美恵子さん(発症時49歳、直腸がん)
森島俊二さん(発症時37歳、S状結腸がん)
(※それぞれの方のストーリーにリンクしています。)

【初期の症状】

❏ 便潜血・陽性、血便

森島さんの場合、会社の健康診断で「便潜血・陽性」と報告され再検査が必要と報告をうけます。しかし直ぐには病院に行けませんでした。
ちょうどその時期は会社の仕事が忙しく、またまだ36歳と若かったため病気の可能性は低いだろうと判断されたそうです。
半年後にトイレで用をたすと日常的に血便が出て、1年後には「いちごジャム」のようなドロッとした血の塊がでてきて驚かれます。
直腸がんの吉田さんは日常的に血便が出ていましたが、まさかがんとは思わず様子をみていました。
お二人とも共通しているのは「便潜血」や「血便」があるのに、「ぢ」だろうと想像し、結果的にしばらくやり過ごされたことです。

❏ 下痢と便秘のくりかえし

安谷さんと吉田さんの場合、下痢と便秘が交互に発生しやがて頻繁に下痢・便秘を繰り返します。
ただお二人とも最初の段階では総合内科で診てもらい、安谷さんは「神経性腸炎」か「過敏性腸炎」、吉田さんは「痔(ぢ)」ではないかと問診をした医師から言われ安心ししばらく様子をみていました。
しかしその後、直腸がんと判明しました。

❏ 貧血、吐き気、嘔吐、腹痛、嫌な感じの疲れ、常にある残便感

四名とも最初の段階では、血便、下痢、便秘、貧血、嫌な感じの疲れといった症状のいずれかでしたが、時間が経つにつれ複数の症状が出てきます。
吉田さんは、吐き気、嘔吐、腹痛、常にある残便感といった症状が出始め、ついに消化器の専門医で本格的な検査を受けています。

【根拠のない過信】

「まさか自分ががんになるなんて有り得ないだろう」という過剰な自信を持つ人は多いのではないでしょうか。
私自身もがんになる前まではそう思っていました。
森島さんは年齢的に若い(36歳)ということと健康的な生活をしていたので病気なんて考えられなかったと言います。
タバコを吸わずお酒を飲まず、毎週スポーツクラブで汗を流し、家族・親戚にがん患者が一人もいないこともあり健康には自信があったと言われています。
一方の吉田さんは、ご自身がすでに前立腺がんを患っているため「まさか2つ目のがんなんてありえないだろう」と信じていました。
中川さんは前の年に健康診断を受けずじまいで翌年にがんが見つかり、安谷さんは健康診断にすら行かれていなかったそうです。

【後回し】

森島さんは健康診断で「再検査・要」とあったにもかかわらずすぐには病院に行かず、やがて時間が経つにつれて、次の健康診断が近づいてきたため、その時でいいやとそのままになってしまったそうです。
吉田さんは高血圧症と前立腺がんの治療から定期的に病院に行っていたにもかかわらず他の診療科で診てもらうことが面倒くさくて後回しにされたそうです。
私の場合(精巣腫瘍)、当時足首の骨折で入院していたため身体に異変を感じたころ、回診に来た医師に知らせ泌尿器科で診てもらいました。
結果的に最終ステージまで進行したので早期発見ではないのですが、それでももし入院していなかったら直ぐに病院に行き診てもらうなんてしなかったと思います。
特に泌尿器科という名称には抵抗があったので入院をしていなかったら病院の泌尿器科にわざわざ行き診てもらうのは後回しになったのではないかと思い怖くなります。

【4人の方に共通する検査】

4人の患者さんに共通しているのがついに決意して病院の消化器内科を受診し大腸内視鏡検査を受けて大腸がん(直腸がん、S状結腸がん)が見つかったことです。
吉田さんは7年前まで毎年大腸内視鏡検査を受けていたにもかかわらず暫く健康診断をお休みにしていたらその間に直腸がんが発症したと振り返ります。

【専門書から】

以下の専門書の大腸がん(結腸がん、直腸がん)に関する初期症状をみると4名の方の症状と同様の記載があります。

❏  「症状でもっとも多いのは下血、…そのほかの症状として下痢、便秘、残便感、便が細くなるなどがあります」(新版 ホームメディカ 家庭医学大辞典(小学館))

❏ 「もっとも多いのは血便です。その他には、排便に伴う症状が出やすいのが特徴で、便秘、便が細くなる、テネスムス(排便が無くてもたびたび便意を感じる症状)、腹痛…」(六訂版家庭医学大全科(法研))

❏ 「発見のきっかけは、検診などで行われる便潜血検査の結果が陽性のため…(家庭医学館(小学館))

【取材を通じて感じること】

どんなことも「もし、あの時こうしていたら…」と言ったところで仕方がない話なのですが、最初の兆候が出た時点で詳しい検査を受けていたら病気が重篤化することを防げられたかもしれないと感じました。
つまり、便潜血、血便、便秘と下痢の繰り返しのいずれかが出た時点で大腸内視鏡による検査を受けて、果たして本当に「ぢ」なのかそれとも「大腸がん」なのか確認することがとても大事だと思います。

日本医師会のHP(https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/largeintestine/)でも、大腸がん検診の流れとして便潜血があった場合、内視鏡検査等を受けるよう促す検診の流れ説明があります。

実際には気軽に内視鏡検査を受けられては困るという医療機関もあるかもしれませんから、そこは患者の常識が必要で医師の判断が尊重されるべきでしょう。
しかし「なんか変だぞ」と感じた時や「(病院に行くのが)面倒くさい」と思ったときにこそ詳しい検査を受けるかどうかでその後の結果が大きく変わり得る気がします。

ご自身と家族のためにも、毎年、健康診断を受け、早い時期に大腸内視鏡を含む詳しい検査を受けてほしいなと取材を通じて感じました。

それぞれの方のストーリ記事はこちら

中川美和さん(発症時48歳、S状結腸がん)
吉田博行さん(発症時63歳、直腸がん)
安谷美恵子さん(発症時49歳、直腸がん)
森島俊二さん(発症時37歳、S状結腸がん)

この記事の著者

(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
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