仕事との両立支援に挑戦し続けたい

『第3期がん対策推進基本計画』(平成30年3月閣議決定)が示されて以降、企業は「治療と仕事の両立支援」の推進が求められています。

今回は、経営理念の一つに「健康」を掲げ、がん治療と仕事の両立支援に積極的に取り組まれているENEOS株式会社(*)社長の大田様にお話を伺いました。同社はNPO法人5yearsの活動に賛同いただき、ご支援くださっている企業です。
(*)取材当時はJXTGエネルギー株式会社。現在はENEOS株式会社に社名変更済み。

【ENEOSと5years】

大久保: がん患者さんの社会復帰を支援するNPO法人5yearsでは、その社会事業化のために本サイトを運営しています。その趣旨に賛同いただき、また、協賛して頂きありがとうございます。

大田: 当社グループは約13,000のENEOSブランドのサービスステーションを全国で展開し、また電気、ガス、水素などのエネルギーを扱っています。
これらのエネルギーは経済活動を続けていく上で必要なものであり、皆さんに安定的にエネルギーをお届けすることは当社の社会的使命であると考えています。
また、ESG経営の観点から、社会に対し直接的・間接的に貢献したいと考える中で大久保さんの5yearsの活動について知る機会をいただきました。

大久保: 今年2月に「がん患者の社会復帰支援」をテーマに貴社で講演をさせて頂きました。

大田: 日本の企業は欧米企業に比べ、ダイバーシティー、両立支援の点でまだまだやれることがたくさんあると思っています。
働き盛りの40代の時に「がん」に罹患し、その後、元の外資系企業に復職された大久保さんから、患者が企業に対して本当に求めているものは何なのか、また先進的な外資系企業はどのような取り組みをしているのか、社員と一緒にお話を伺いたかったのです。
実際に講演を聞かせていただいた多くの社員が、切実に「希望」を求めている患者の方々の気持ちを知ることができたと思っています。

【経営トップからのメッセージの大切さ】

大久保: 昨年(2018年12月)、大田社長から社員に向けて“いきいきと働ける会社づくりに向けて”というレターが出ましたね。


大田: はい。がんに罹患した従業員が安心して治療と仕事を両立して行けるようにとの思いから、文章にして全社員に発信しました。その中に私からの2つのメッセージを込めました。

❏ がんに罹患した場合においても、療養しながら安心して働き続けられる環境作りと、支援体制の強化に積極的に取り組んでいきます。

❏ がんに罹患した人を支える周囲の社員が正しい理解を持ち積極的な支援をすることで、組織の一体感と結束が強化され、大きな力となっていくことを期待しています。

大久保: これは本当に素晴らしいと感じました。がん患者の大きな課題の一つが、「がんの事実を隠す」、「がんで会社を辞める」です。
これは、「働き続けられないのでは…?」という患者の不安の表れです。これでは、どんなに立派な復職支援制度を作ったとしても利用されません。
まずは、経営のトップが従業員を安心させることが必要です。安心した患者が、初めて両立支援制度を利用していきます。経営トップが、こういったメッセージを発表しているENEOSは素晴らしい会社だと思います。

【すぐ手に届くところにあるガイドブック】

大田: この春(2019年2月)、ガイドブック(手引書)を作成しました。社員が「がん」に罹患した際に利用できる社内外の制度などを説明したものです。みんな意外と制度について知らないものですから。

大久保: これも良いと思います。がんになると、患者はまず会社を休める日数が何一あるのかを知りたくなります。そして次に治療補助制度や団体生命保険などのお金に関することが気になります。さらに治療期間中は、利用可能な勤務形態を知りたくなります。こう言った内容が盛りもまれたガイドブックは、とても助かるはずです。

大田: 社員が病気を発症した後の会社のサポートは、とても大事です。それと同時に、社員の日頃の健康維持も大切と考えております。当社は病気予防の観点から、がん検診を全社員に推奨しております。

大久保: NPO法人5yearsに登録されているがん経験者は7,600人以上(2019年9月時点)いますが、定期検診で早期に見つかった人もいます。一方、世の中には「がんが見つかるのが怖いから、がん検診を受けたくない」という人もいます。先程の経営トップメッセージがあると、例え「がん」が見つかったとしても安心できるので、がん検診率の向上にもつながると思います。

大田: 仕事において最高のパフォーマンスを発揮するためには、社員それぞれが健康であることが必要です。社員の健康を会社がそのサポートをしていくことが、健康経営であると考えています。

大久保: なるほど。素晴らしいですね。

【会社と社員の信頼関係】

大久保: ご支援頂いているNPO法人5yearsでは、「がんを発症しても人生は終わりではない」というメッセージを社会に送り続けています。
患者のみならず、周囲の人も意識を変えていただき、がん発症後も、その人が活躍できるような社会になって欲しいのです。そのために企業ができることは、今後も沢山あるのではないでしょうか?

大田: 自身の病気のことを話す社員の勇気ももちろんですが、会社と社員の間の信頼関係も大切です。
自分の弱みと感じている事を話しても拒絶されない、真摯に受け止めてもらえて、一緒に療養生活や社会復帰について話せる。働き方の見直しが必要になった人も受け入れてもらえる職場風土や雰囲気づくりを進めていきたいと思います。
私たちENEOSグループは健康経営を標榜していますが、会社と社員との間で築いた信頼関係こそが、社員がいきいきと働くための原動力であり、健康経営が目指す一つの姿ではないかと考えています。
今回、5yearsを通じてがんについて勉強をさせていただく機会を得たことに感謝しています。当社は、今後もがん治療と仕事の両立だけでなく、社員の様々なライフステージおける仕事との両立支援について先進的な取り組みに挑戦していきたいと思います。

この記事の著者

(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
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