がん治療に良い病院を選ぶのための8つの視点

病院選びで悩まれている方、これから病院を選ぶ方に読んでいただきたいコラムです。

こんにちは。
がん患者さん支援団体NPO法人5yearsを運営しております大久保淳一です。
「どこの病院が良いでしょうか?」とか、「良い病院を教えてください」という類の「病院選び」に関するご質問をよく受けます。
ここでは、自身の経験と5years登録者の皆さんのご意見をもとに「良い病院選び」について考えをまとめてみます。

【医療機関・病院について】

❏ がん診療連携拠点病院

  がん対策基本法(平成18年)に基づくがん対策推進基本計画以降、質の高いがん医療を提供することを目的に各都道府県に最低1施設、厚生労働省が認可したがん診療連携拠点病院があります。
これは、がん治療を受ける病院選びに於いて、まず参考にすべきと思います。

>>がん情報サービス「がん診療連携拠点病院などを探す」

❏ 検査機器

  私は、自身ががん治療を受けていた当時(2007年)、CT画像検査室の前に行くと、検査機器を説明するビデオが自動で流れていました。そのビデオの中で、最新の検査であるため、従来とは異なり、細かい病片も見落とさない優れた検査機器であると紹介していたのを覚えています。
当時は、「積極的に病気を見つけることを自慢するなんて、なんて嫌な機械だ!」と不快に受け取りました。しかし、短い期間に再発・転移した患者さんの取材をすることもあり、検査機器の性能はとても重要だと理解しています。
医療機器メーカーの担当者と話すと、例えばCT画像検査機器一つにとっても、ピンからキリまであり、新しい機器と古いタイプでは解像度が異なるなど性能の差が大きいと言われます。ですから、なるべく性能が良く新しい検査機器が入っている病院の方が良い病院と言えるでしょう。

❏ 病院ランキング

  私は、以前、某大学の教授が民間企業と取り組んでいた外科手術に関する治療実績と死亡者数の相関を分析するお仕事を一緒にさせて頂きました。その結果に対する私の感想は「(よく雑誌で発表される)病院ランキングはあてにならないなぁ」というものです。
日本には外科治療を行っている医療機関が4600以上ありますが、その分析では1位から4600位まで序列がつくものではありません。症例数が減るにつれて、或る閾値を下回ると急にガクンと死亡率が増えてしまう恐ろしい結果でした。
しかし、ここから見える事は、ある一定数以上の治療実績があれば、死亡率は下げ止まり、そのグループの病院群にあればよい病院と考えてよいのだろうということです。
もちろんこの分析結果に全ての医療機関が当てはまるわけではありませんし、あまりにそれを意識しすぎることは良くないと思いますが、上記の分析で見えた結果から、閾値を超えた医療機関であれば、「おすすめできる病院群」であるといってよいと思います。

❏ 外科手術の症例数と希少がん

  がんに限らないと思いますが、前述の「病院ランキング」に記載した内容にも関連して、病気治療に関しては治療実績による経験と知識が臨床現場ではとても大事だと思います。ですので、ご自身が患っているがんの治療実績とか症例数が多い病院は、経験と知識が豊富と考えられます。
ミリオンズライフに登場された三枝幹弥さん(山梨、中咽頭がん)は、その取材(ストーリーインタビュー)の中で言われていましたが、患者人口が少ないがん種(中咽頭がん)だったため、症例数の多い東京の病院(三枝さんの場合、がん研有明病院)を選ばれたそうです。

❏ 通院について

  病院との付き合い方は、がん治療後も5年・10年と続くことが一般的です。とても遠方の病院を選んでしまい、治療後の経過観察のたびに、飛行機・新幹線を利用し、数日がかりで通っているがん経験者の方もいます。同じレベルの病院であれば近いほうが良いです。
また、治療が終わってから、近くの病院に転院することも考えてもいいでしょう。
いずれにせよ、あまり無理のない病院選びが良いと思います。

【外科の医師について】

病院の良し悪しと言っても究極的には担当するお医者さんが自分にとって良い先生かどうか、信頼できる医師かどうかということが最も大事ではないかと思います。ここでは外科医に限り考えをまとめます。

❏ 有名な大学教授の先生

  時々、雑誌やテレビで情報を得て、〇〇大学病院の〇〇教授先生が、その道で有名らしいと聞きつけ、その先生の執刀を希望される患者さんがいます。
私は、この方法はあまり良いとは思いません。
なぜなら教授クラスになると50代の人が多いはずです。一方、外科手術は体力勝負の仕事です。年齢がかさむにつれ体力は落ちますし、(オペで大事な)眼だって老眼化が進みます。
だから、手術現場の第一線で活躍している脂がのっている医師は、30代~40代半ばと理解しています。
また、大学病院のような規模の大きな病院になると教授クラスは手術現場で監督をする立場になり、実際には若手が執刀することも多いと聞きます。
単に有名だからとか、肩書にこだわるのは如何なものかと感じます。

❏ 医師のコミュニケーション能力

  私は、臨床の現場では、患者とのコミュニケーションが上手な医者は、「信頼できる医師」の大切な要素だと感じています。これは医療の世界に限らず、金融業でも他のサービス業界でも同じだと思いますが、相手の気持ちがわかり、相手と上手に意思疎通できる人は優秀です。
逆に結構な数の患者さん・患者家族が、主治医と上手く意思疎通ができず困っているという嘆きを聞きます。
「外科的な腕前が良ければ性格とかコミュニケーション能力は二の次ですよ」と言われる人もいますが、果たしでそうでしょうか?
大抵のがん手術は、脳外科、心臓外科のように非常に繊細な指先の技術を要するものではないと理解しています。
そうなると、臨床現場では、医師側のコミュニケーション能力がとても大事な気がします。
担当した医師と上手くコミュニケーションがとれていれば、先ずは安心して、自分にとって良い病院と考えてもいいのではないでしょうか。

❏ 急性期のみ対応

  医療機関や医師によっては、患者の急性期のみ担当して、その後は他の病院に転院してもらう仕組みにしているケースもあります。
事前によく確認して納得してから治療を受けられるのが良いと思います。

【5yearsサイト】


(上図は、5years登録者が観られる各人の病院評価情報例です)

5yearsのウェブサイトには、登録した人だけが観られる「他のがん患者さんたちが、どこの病院で、どんな治療を受けたか」についての情報があります。また、その患者さんの病院に対する5段階評価(とても満足、満足、普通、不満、とても不満)も観られます。
あくまで個人の担当診療科に限った評価ですが、何もないよりは、ずっと参考になると思います。宜しければ5yearsサイトを訪れてみてください。

【最後に】

良い病院というと、ランキングのように受け取りがちですが、上述の通り、序列がつくものではなく、グループ分けされているのではないかと考えています。
つまり、ある一定条件(治療実績、症例数、医師のコミュニケーション能力、及び病院の医師育成方針、検査機器の性能等)をクリアすれば、大差なく、その患者さんにとって良い病院になると思います。
逆に、まずは、望ましくない病院(治療実績が少ない病院、意思疎通が出来ず信頼できない医師)を避けることが大切だと思います。
また一方、私ががん治療を受けていたときの個人的な感想ですが「神の手みたいな医者は存在しない」と感じました。これは、色んな病院でセカンドオピニオンを受けて、肌で感じたものです。
テレビや雑誌で面白おかしく報道されるニュースに惑わされてはいけません。
隣の芝を青くみるのも、ほどほどにすべきだと思います。
病院選びをする場合、(がん診療連携拠点病院などの)治療実績が豊富な病院を検討したり、担当医が自分にとって信頼できそうな医師かどうかをみて、自身にとって良い病院か否かを判断するのがいいと思います。

※5yearsの病院情報は、ウェブサイト「5years」に登録してご覧ください。

この記事の著者

(5yearsプロフィール)

日本最大級のがん患者支援団体 NPO法人5years理事長、本サイト(ミリオンズライフ)の編集人。
2007年、最終ステージの精巣がんを発病。生存率20%といわれる中、奇跡的に一命をとりとめ社会に復帰。自身の経験から当時欲しかった仕組みをつくりたいとして、2014年に退職し、2015年よりがん経験者・家族のためのコミュニティサイト5years.orgを運営。2016年より本サイトを運営。
現在はNPO法人5years理事長としてがん患者、がん患者家族支援の活動の他、執筆、講演業、複数企業での非常勤顧問・監査役、出身である長野県茅野市の「縄文ふるさと大使」として活動中。
>>新聞、雑誌、TV等での掲載についてはパブリシティを参照ください。
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